陳稼荘果樹園の取り組み
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様々な果物が手に入る現代、桑の実やその加工品を見かけることがあるでしょうか?
「最近、桑の実を見ることも食べることも難しくなったね。」 友人とのささいな会話から陳氏は桑の実栽培への挑戦を決意します。 しかし、時経たずしてその挑戦が険しく困難な道であることを痛感します。
元来、桑の木は葉っぱを多く繁らせますが、果実となると極端に収穫量が少ないのです。多年の研究開発で果実の多い桑木であっても、その代償として虫がつきやすく、病気に弱い脆弱性を持つ苗木しか手に入らなかったのです。
桑の実に価値が無いから流通しないのではなく、あまりにも多すぎる労苦が桑の実栽培から人々を敬遠させているのです。
陳氏の挑戦と信念は、8年の長きを経て大きな賞賛を得ました。いまや口コミで広がった評判は、対応しきれないほどの注文と実績になり、環境保護団体のご支援を賜り有機栽培の認証を受けています。
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農業理念
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私たち農民は自然の従者であり、自然を守りゆく責任を持たなければなりません。自然をそこなう安易な方法に頼らず、額に汗する労苦をいとわない姿勢こそ農民にとって大切な資質であり矜持であると考えます。
この自然の恵みは今を生きる私たちだけの占有物ではありません。子供たちの時代またその子供たちの時代へと、連綿と引き継がれる大切な未来遺産なのです。
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食べ物を作るとは ?
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美味しさは食べることの本質であり、美味しさを求めることは人の本質です。その本質を謳い文句に食べることの本来の意味を見失いかけています。食べる行為は私たちが健康に生きる大切な手段であり、それに代わる行為はありません。 |
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みなさまへ届けるということは ?
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私たち自身の便益をそこねてでも自然味にこだわります。なぜなら防腐剤や着色料・香料を使わないことで、化学添加物の食害と前向きに対峙する考えだからです。
現在は安く大量に商品を製造するために、化学添加物に依存する時代といえます。どんなにか、化学添加物に頼り売れる商品を提供する方が楽な道程でしょう。しかし私たちの矜持は売れる物作りではなく、安心して食せる物作りなのです。
ジャムに加工する為のペクチン一つとっても天然にこだわります。お酢にしても3年間醸造してお渡ししています。地道に栽培し、信念を持って加工し販売しています。
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有機認定と美育農法
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現在日本国内で販売するための有機認定はとっていませんが、台湾国内ではもちろん認定されています。今後日本でも認定がとれるように努力をしていきたいと考えています。 |
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陳稼荘果園では、1989年の創立時から食の安全性に配慮した農薬・除草剤・化学肥料を使わない自然農法に取り組んできました。財団法人・国際美育自然生態基金会(MOA)と中華民国有機農法産銷経営協会(COAS)の自然農法認定を取得しています。 |
陳 氏とは ?
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自身も3人の優秀なお子さんをお持ちで、休みの日には家族総出で農園を手伝うといいます。自然のさまざまなことに関心をもち、わたしたちにいろいろな話をきかせてくれます。聡明な頭脳の持ち主は家族を、身近な人を、みんなを明るくしたいという想いを持っています。近づきがたいと言う印象でしたが、お会いすると気さくで底抜けに明るく素朴な方でした。陳氏からは今後も目が話せません。 |
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取材が殺到するという陳氏。「ふつうのおじさん」という印象からはかけはなれた才能の持ち主です。(写真上)
息子さんの中学時代の学校指定の布カバンを農作業の道具入れにしているそうです。「物は何でも大切に」リサイクルなんてかっこいいものじゃなく、自然と身についた物に対する姿勢だそうです。貧しかった幼少時代に多くを学んだと語っています(写真右) |
「森羅万象すべからく理(ことわり)がある。」そう語る陳氏の瞳には、凛とした、いつになく引き寄せられる思いがありました。
「何事も繋がっているんだよ。たとえば、ある地方で大きな山火事があった。翌年、離れた地方がひどい不作になった。調べてみたら、山火事で失われた森が今まで風を湿らせ、その地方に適度な湿気を与えていたんだよ。自分とは関係の無いと思っていることが、実は深く繋がっているんだ・・・。」
「つながりは横(同時代)だけではない、当然縦にもある。今が悪ければ、昔が悪かったということ。今が悪ければ未来が良くなるはずがない。」
農薬や化学肥料。官公庁の安全基準を満たしていても、蓄積される残留物は、子供たちの時代に何を残すのだろうか。すべては繋がっているのです。今を生きる私たちはどんな行動を取るべきでしょうか?
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